セミリタイアの割合は何%?調査の数字と実現者の違いを解説

窓辺の自宅で調査資料を読みながら働き方を考える人物

日本でセミリタイアしている人は何%なのでしょうか。結論からいうと、今回確認した公表資料だけでは、日本全体のセミリタイア実現者の割合を一つの数字で示すことはできません。FIREを実現したという回答、早期退職への関心、働き続けたいという希望は、それぞれ違う指標です。

参考になる民間調査はあります。ただし、たとえば「86%」という数字も、全国民のうちセミリタイアした人の割合ではありません。誰に何を聞いた結果なのかを確かめると、数字の意味がかなり変わります。

この記事では、セミリタイアとFIREの違いを整理したうえで、調査対象・時期・回答内容を併記して割合を読み解きます。最後に、周りの人数に流されず、自分の生活費と働く量から準備を判断する方法も紹介します。掲載する調査は2021〜2024年の資料で、2026年10月2日時点の実現率を表すものではありません。

この記事のポイント
  • セミリタイアの全国実現率とFIRE調査の回答率を区別できる
  • 2.4%・58.9%・86%がそれぞれ何を示すか分かる
  • 若者の資産形成への関心を実現者の割合と取り違えずに読める
  • 退職判断に必要な家計の不足額とお試し条件を整理できる
目次

セミリタイアの割合と調査の実態

大きな木製人形の集団と小さな標本集団を虫眼鏡で確認する様子
調査対象と全体の違いを表すイメージ(AI生成)。特定の統計比率を再現した画像ではありません。

割合を知るときは、最初に「どんな状態をセミリタイアと呼ぶか」をそろえる必要があります。同じ言葉でも、調査によっては完全に退職した人だけを数えたり、経済的に自立したあとも働く人を含めたりするためです。

セミリタイアとFIREの違い

セミリタイアは、仕事の量を減らし、貯蓄・資産からの収入・無理のない労働収入などを組み合わせる暮らし方として使われます。週何日働けば該当する、といった全国共通の境界があるわけではありません。

FIREはFinancial Independence, Retire Earlyの略で、経済的自立と早期リタイアを指します。一方、アーリーリタイアは早く仕事を辞めるという時期に注目した言葉です。早期退職しただけで、資産面でも自立できているとは限りません。

言葉注目する点割合を読むときの注意
セミリタイア仕事を減らした生活と収入の組み合わせ働く量や資産の条件が資料ごとに違う
FIRE経済的自立と早期リタイア完全退職を指すか、働く形も含むか確認する
アーリーリタイア通常より早い時期の退職退職理由や経済的自立の有無は別に確認する

この記事では、セミリタイアを「働く量を減らしながら生活を維持する選択」として扱います。ただし、引用する調査のFIREや経済的自由の定義を、この意味へ勝手に置き換えることはしません。基本的な生活像はセミリタイアの意味と始め方で確認できます。

実現した人の割合は分かる?

参考になる数字として、リスクモンスターの2022年5月23〜26日の調査があります。全国の20〜59歳の男女800人を対象としたインターネット調査で、FIREを「実現した」と回答した割合は2.4%でした。

これは、調査に回答した800人の中での自己申告です。働きながら暮らすセミリタイアを全国共通の条件で集計したものでも、日本の総人口を数えたものでもありません。そのため「日本人の2.4%がセミリタイア済み」と読み替えることはできません。出典はリスクモンスターの第1回「FIREへの憧れ」調査です。

別の例として、日本財託の2021年調査では、同社へ管理を委託する不動産オーナーの回答者1,254人のうち、経済的自由またはFIREを実現しているという回答が172人、資料上では14%でした。この調査での経済的自由は、不労所得で日々の生活費を賄える状態です。

不動産オーナーという対象の特徴があり、経済的自由と早期退職も区別されています。14%を全国のセミリタイア率や完全退職率として使うのは不適切です。出典は日本財託「不動産投資とFIREに関するアンケート調査結果」です。

このように、数字が異なっていても、どちらかが誤りとは限りません。対象者や質問内容が異なる数字を一列に並べて平均したり、日本の人口に掛けて人数を推計したりしないことが大切です。

関心を持つ人の割合は別の数字

実現者の割合と、希望する人の割合を混同しないよう、主な調査を整理します。以下は同じ条件で比較したランキングではありません。調査ごとに分母も質問も異なります。

調査・時期回答者・分母回答内容と割合
リスクモンスター
2022年5月
全国20〜59歳の男女800人FIREを実現した:2.4%
実現したいと思う:33.9%
東証マネ部!
2023年11月
全国20〜40代の会社員1,404人FIREをしてみたいと思う:58.9%
学情
2024年10〜11月
対象サイトを訪れた20代社会人189人FIREに興味がある・やや興味がある:合計51.4%
日本財託
2021年
未実現のオーナーのうちFIREを目指す466人実現後も好きな仕事をする形を希望:86%

東証マネ部!の58.9%は、2023年11月の調査でFIREを「してみたい」と答えた会社員の割合です。資産が足りている人、すでに退職した人、具体的に計画している人の割合とは違います。出典は東証マネ部!「FIREって知ってる?してみたい?」です。

「やってみたい」という回答には、遠い将来の希望も含まれます。割合が高いから実行しやすい、あるいは自分もすぐ実行すべきだ、という結論にはつながりません。逆に実現者の割合が小さくても、それだけで自分の計画が不可能だとは判断できません。

若者の関心は実現率ではない

学情の調査では、資産形成に「興味がある」55.0%と「やや興味がある」25.4%の合計が80.4%でした。一方、FIREへの関心は「興味がある」24.9%と「やや興味がある」26.5%の合計51.4%です。

調査期間は2024年10月18日〜11月1日、対象は「Re就活」「20代の働き方研究所」のサイト来訪者である20代社会人、有効回答は189件です。全国の20代全員を同じ条件で調べた数字ではありません。出典は学情の資産形成に関する調査資料(2024年12月5日発表)です。

ここから分かるのは、回答者の中に資産形成やFIREへの関心がある人が一定数いたことです。資産形成は老後、住宅、教育などにも使うので、関心がある人全員がセミリタイアを目指しているわけではありません。

また、対象や質問が異なる単発の調査を並べただけでは、関心が年々増えているかも判断できません。「若者の8割が早期退職を目指している」「実現者が急増している」とまで広げず、確認できた範囲で読むのがよいですね。

86%の分母を確認する

日本財託の調査に出てくる86%は、セミリタイアを考えるうえで目を引く数字です。ただ、分母は全回答者1,254人ではありません。経済的自由を未実現の1,082人のうち、FIREを目指すと答えた466人が対象です。

その466人のうち401人が、目指すFIRE像として「自分の好きな仕事だけで働く(セミリタイア)」を選び、資料では86%と示されています。残り65人は働かない完全FIREを選んでいます。つまり、特定のオーナー層の中の、さらにFIREを目指している人の希望を表す割合です。

この結果は、経済的自由を得ても仕事を続けたいという選択があることを示します。ただし「日本人の86%がセミリタイアを希望」「セミリタイア実現者の86%が満足している」という意味ではありません。質問の対象と答えの内容を、そのままセットで覚えると誤解を防げます。

セミリタイアの割合を判断に活かす

自宅のテーブルでノートと電卓を使い生活費を整理する手元
生活費と手取り収入を整理するイメージ(AI生成)

周りにどれくらい同じ考えの人がいるかは参考になります。しかし、退職後の生活が続くかどうかは、自分の支出、継続できる収入、資産の使い方で決まります。まず割合の意味を確認し、そのあと自分の条件へ戻して考えましょう。

調査の数字を読む確認手順

二つの調査資料を並べて虫眼鏡で確認する手元
調査資料の条件を確認するイメージ(AI生成)

新しい割合を見つけたら、見出しの数字だけで判断せず、調査概要まで確認します。次の順で読むと、どこまで自分に当てはめられるかを整理できます。

  • 調査主体と元資料のURLを確認する
  • 公表日ではなく、実際の調査期間を見る
  • 年齢・職業・資産条件・募集方法から回答者を確認する
  • 質問が実現・希望・関心のどれを聞いているか読む
  • 全回答者か、前の質問で絞られた人かという分母を確認する
  • 全国集計か特定層の調査かを分けて受け止める

たとえば、全体に1,000人が回答していても、ある設問は「FIREしたいと答えた人だけ」に聞いているかもしれません。その場合、後の設問の割合を1,000人全体へそのまま広げられません。「回答者数」と各質問の「分母」は分けて確認してください。

経年変化を見るなら、年齢構成、募集方法、質問文、集計の条件がそろっているかも大切です。異なる調査の33.9%と58.9%を比べて「関心が25ポイント増えた」と説明するのは避けましょう。

SNSの実例から分かる範囲

SNSやブログの実例は、生活の具体像を知る材料になります。ただ、投稿者は全人口から無作為に選ばれているわけではありません。検索したりフォローしたりすると似た発信が目に入りやすくなるため、見かける件数をそのまま社会全体の割合として扱えません。

実例を参考にするなら、貯蓄額だけでなく、家族人数、家賃や住宅ローン、働く時間、毎月の収入、年金を受け取るまでの期間も合わせて確認します。同じ資産額でも、毎月必要な金額が違えば、生活を維持できる期間は変わります。

また、達成直後の報告と、数年間継続した生活の記録は、判断できる内容が違います。成功例は「この条件で成り立った例」として読み、見えていない支出や家族からの支援がないかを考えると、自分の家計へ無理に当てはめずに済みます。

自分の家計の不足額を出す

実行を考えるときは「何歳なら何千万円」と決める前に、生活に必要な支出から、無理なく続けられる手取り収入を差し引きます。年齢は計画する期間に関わりますが、必要な資産額を年齢だけで決めることはできません。

月の不足額=生活に必要な月額支出−継続できる月額手取り収入です。支出には普段の生活費だけでなく、税金・社会保険、住宅や家電の修繕、医療などを考慮します。年単位の支出は12か月で割って月額に置き換えると、見落としを減らせます。

項目仮の条件
月額支出20万円(年間の臨時支出などの月割り分を含む)
月額手取り収入12万円(継続する仕事の収入)
月の不足額20万円−12万円=8万円
年の不足額8万円×12か月=96万円
10年間の不足額96万円×10年=960万円

これは計算方法を示す仮の例で、平均生活費や退職に必要な資産の推奨額ではありません。10年間の960万円は、支出と収入が一定で、運用収益・物価変動・年金などを考えない単純計算です。手元に960万円あれば安全に退職できるという意味ではありません。

さらに、仕事の収入が減る場合、生活費が上がる場合、大きな支出が重なる場合を別に試算します。年金開始前後で不足額が変わることもあるので、同じ額を生涯にわたって掛け続けるのではなく、期間を分けて見てください。詳しい計算は生活費と収入からセミリタイア必要資金を計算する方法へ進めます。

働く量を減らす前に試す

資金があっても、予定した仕事の収入が続かなければ不足額は大きくなります。退職後の収入を見積もる際は、売上ではなく経費や税負担を考えた手取りを使い、まだ得ていない副業収入を確定した収入として計算しないようにしましょう。

準備段階では、無理のない期間を決めて、想定する生活費で暮らせるかを試します。年間の支出まで全部再現できなくても、固定費、日々の買い物、家族が負担に感じる点は確かめられます。仕事の量を減らせるかどうかは、勤務先の制度や契約条件を確認してから検討してください。

試す前に、再び働く量を増やす条件も決めておきます。「毎月の不足額が想定を超え続けたら見直す」「家族の支出が変わったら計画を作り直す」など、資産だけでなく収入と生活の変化も基準にすると、判断を先延ばしにしにくくなります。

複数の収入源があっても、同じ景気や市場の変化で一緒に減る可能性はあります。数だけで安心せず、収入減と資産の値下がりが同時に起きた場合も確認しましょう。条件を変えて比べるにはセミリタイアのシミュレーションで確認する項目が参考になります。

セミリタイアの割合は条件と読む

セミリタイアの全国実現率は、今回確認した資料からは確定できません。一方、民間調査にはFIREの実現状況や関心、実現後に働きたいという希望を示す数字があります。それぞれの対象と質問を確認すれば、参考にできる範囲が分かります。

最初の一歩は、気になる割合の調査概要を読み、そのあと自分の月額支出と継続できる手取り収入を一つずつ書き出すことです。周りの人数は背景の情報として受け止め、働く量を減らしても生活が維持できる条件が整うかを判断していきましょう。

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